山根 昭郎様(S50法卒)の書作「砂漠の白い花」のご紹介です。是非ご一読を。
著作の背景、 執筆の動機について
本作は、 携帯電話という言葉すら一般に知られていなかった1980年代初 頭の中東の小国、クウェートを舞台に、 移動体通信の第一世代システム(いわゆる1G) を売り込もうとした日本の企業人たちの奮闘を描いたフィクション です。
1975年(昭和50年)に慶應義塾大学を卒業後、 私は総合商社に入社し、 イランやクウェートをはじめとする中東地域で海外勤務を経験しま した。当時の日本経済はまさに絶頂期にあり、自動車、電子機器、 半導体といった産業で世界のトップを走る日本人たちは、 自信に満ちて世界に挑んでいました。私自身も、 そうした時代の空気を胸に刻みながら、 異文化との出会いや衝突のなかで、 言葉や国境を超えて築かれる信頼と誇りを持って仕事に取り組んで きました。
この小説では、そうした実体験をベースに、 人と人とが異なる価値観の中で真摯に向き合い、 ときに揺らぎながらも矜持を持って生きる姿を描いてみたいと思い ました。
技術と誠意をもって未来を拓こうとした一人の日本人主人公と彼を 取り巻く人々との交流を通じて、国や民族、文化、 宗教を越えた人間ドラマを綴っています。遠い時代、 遠い国の話ではありますが、 今日にも通じる何かを感じていただければ幸いです。
山根 昭郎